2023年 左右社

https://sayusha.com/books/-/isbn9784865283662

978-4-86528-366-2

アンジェラ・チェン (著) 羽生有希 (訳)


2023/11/01

下北沢B&Bで行われたイベント

羽生有希×中村香住×深海菊絵×松浦優「フツーの恋愛、性愛ってなに?」『ACE アセクシュアルから見たセックスと社会のこと』刊行記念

https://bb231101a.peatix.com/

に行ってきた。

本の感想をきちんと残せてなかったのでここにメモ。

最小の結婚 結婚をめぐる方と道徳-エリザベス・ブレイク」で出てくる性愛規範性 (amatonormativity、本書では恋愛伴侶規範と訳される)ともいろいろ交差する

  • クワロマンティック (wtfロマンティック)の話

    • アセクアロマを表現するのに、-1(性嫌悪)~1(アロー)ではなくNullのことである、という言い回しをしている人がいて、なるほどなと思ったのを思い出した
    • ACEとクワロマンティックの違いは確かにあるような気がしていて、それはACE≒Nullのメタファーでいうと、クワは「そもそも型の定義がいろいろおかしいんで自分もうコード書くのやめるわ」というちゃぶ台の返し方ではないか、と思っている
    • 「マジョリティの恋愛についてのエスノメソドロジーこそ足りない」
      • これもわかる。巷にはアローの物語が蔓延されてる一方で、逆説的に恋愛・性愛のようなパーソナルなことを理論化してはいけないという空気がどこかにあり、結果的に恋愛とはなんなのかの個別の語りをきちんと拾い上げることもできていないと思う
  • ポリアモリーとACEは遠いようで近い

    • それは結局amatonormativityに抑圧された経験という共通点があるから
  • 同意は契約書ではない、ずっと同意の確認をし続ける積み重ね

    • 中村さんのBDSMコミュニティにおけるセーフ・ワードの話など
  • インセルを擁護はできないものの、amatonormativityの抑圧がなければそもそもインセルの苦しみもなかったよな、という話

  • フィクトセクシュアルの話。対人性愛がノーマルとなってることを疑う

    • 特に二次元(というか人工物)が対象のフィクトセクシュアル/ロマンティックはある種ロマンティシズムを強化する方向に向かいそうで、インセルの話とかを聞いた後だとちょっと身構えそうにもなる。逆に、amatonormativityを疑っていて対人性愛も疑ってる、という人がそもそも可視化されていない(しそう自認することも難しい)だけなんだろうが
  • 質問コーナー

    • ACEが主人公、題材のドラマとかが日本でも見られるようにはなって、いわゆる性嫌悪でしょみたいなスティグマを回避するようにはなってきた一方、「なんかふわふわした感じの人」みたいな別の表象が立ち上がってきててちょい怖という話
      • 言われるとそれめっちゃわかる
      • 単に日本国内では扱う作品の絶対数が少ないせいもある、という話
      • 直接明示してないけどそういう読みができる=クィア・リーディングはいろいろできそう
    • 国が結婚を肯定する意味
      • 国が特定の関係性に優劣をつけるのはアレだけど、それがなければもっとマジョリティだけが生きやすいものになるのでむずい
    • セクシュアリティのラベルを自認する、自分のアイデンティティとして名乗ることの意味
      • 言葉やラベルは結局道具であるという考え方
        • 自分がどういう政治的立場を表明したいかが重要、ということでいいのかな
      • マジョリティの側(シス・ヘテロ・アロー・対人)にラベルをつけて対称性を持たせることの力

イベントを経て総合的な感想

  • 自分が興味があるのは、ACEならでは=null的定義によって繋がれている人たちの運動や連帯(あるいは連帯しないけどつながり続けること)の形はどんな可能性があるのだろう、ということなのかもしれない
    • 最近クリエイティブデモクラシーとかでデューイのボトムアップな民主主義のあり方について考えていたので、その辺が自分の中ではリンクしている
      • 個人が個人を保ったまま連結すること
    • 単純に、シスヘテロ(でわかりやすくアセクアロマとも思えない)自分がプライド系のイベントに参加するなんてとんでもないという意識がまだ自分の中にある
      • なぜなら自分がマジョリティ側にいることで色々面倒ごとを回避してきた自覚もあるので
  • ACEの本が書けるということは、頑張ればグレーロマンティックデミロマンティックについてもそれだけで本が書けたりするもんだろうか
    • 本書でもデミの話は、クィアのコミュニティの中からも外からも疑問視されるというありがちなスティグマについて記述はされてたもののそれ以上はあんまり掘り下げられず、こっからの掘り下げってどうすればできるんだろうね!

余談:

  • デミの話、一般的な「一定以上親密である」ことを定義に挙げるのは個人的にはちょっと違う気がしている
    • なぜなら「親密である」の定義が循環参照するので
    • これ「同意は契約書ではない」の話と繋がってると思う。単純に会話を積み重ねた回数とかの、何かしら時間の関数になっていることがデミの必要条件、と自分では解釈している